狂気のウイルス(きょうきのういるす)

「ここがジュンジ先輩が住んでるところか…」

 

俺はハヤト。とあるIT企業の新人プログラマー。

入社して半年。研修期間もそろそろ終わり、いよいよ現場に配属ってときに、ちょっとしたトラブルが発生した。

急に会社に来なくなったのだ。俺の教育係のジュンジ先輩が。

 

ジュンジ先輩は色白で真面目で、ちょっとおとなしい人。

いつも「うんうん」と話を聞いてくれるやさしい先輩で、半年間つきっきりで俺の面倒をみてくれた。

同期の人や課長からもいろいろ仕事を頼まれていて、毎日深夜まで残業する超多忙な先輩。

それでもいつも相談にのってくれたり、ミスをフォローしてくれたり、俺が独り立ちできるようにコツコツ技術を教えてくれた。

 

そんなやさしい先輩が急に会社に来なくなってしまったのだ。

二週間前「調子が悪い」とメールが来たのがことの始まり。

一昨日おとといからは休み届けのメールも来なくなり、心配になった同期の人が、家まで様子を見に行ったのが昨日の話。

結局留守で、何もできずに帰ったらしいけど。

今日も課長が朝イチバンで様子を見に行ったみたいだけど、やっぱり留守だったって。

そして課長に頼まれた俺が、今まさに先輩のアパートにたどり着いたといった状況だ。

 

アパートは古い建物で、昼過ぎなのに渡り廊下は暗く、ゴミが散らかっている。

歩くと「ミシリミシリ」と音がして、今にも床が抜けそうなオンボロだ。

先輩の部屋は「204号室」。長い廊下の一番奥にある角部屋だった。

「204号室」のドアの前に立ち、呼び鈴を鳴らす…

…ん?壊れてるみたいだぞ。

しかたがないので、ドアを叩いて呼びかけてみた。

ドンドンドン!!「ジュンジ先輩!俺です、ハヤトです!大丈夫ですか?!」

「…」部屋の中はシーンとしたまま。

ドンドン!「先輩!?いないんですか?先輩!!」

「…」

やっぱりいないのか…どこいっちゃったんだよ、ジュンジ先輩…

 

…何もできず、ドアの前で立ち尽くしていると、部屋の中から「ミシリ」と音がした。

…?!

「ミシリ…ミシリ…ミシリ……カチャリ」

近づいてきた気配が「カギ」をあけた…そして…ギギィー…ゆっくりとドアが開いた…

ドアの奥には、俺をみて目を見開いたジュンジ先輩が立っていた…

 

「先輩?!…ジュンジ先輩!大丈夫ですか!」

「…」先輩は黙ったままだ。

「なんとかいってくださいよ!課長がすっごい心配してて!」

「…」うつむく先輩。

「今日も…いや昨日も留守だったって、誰もいなかったって聞いて!俺、先輩が死んじゃったじゃないかって心配で!ジュンジ先輩!!!」

「……す」ボソリと先輩が何か言った。

「…?!…はい?なんて言ったんですか?」

「……るす…居留守…」

<<恐怖音>>

「今日…昨日…居留守………」

 

今日…昨日…居留守…?

きょうきのうい留守…

狂きのういルス…

『狂気のウイルス…』

ダジャレ怪談協会による独自採点

  • 伝統のネタ度:★
  • ネタ文字数の長さ:★★★
  • むりくり度:★★
  • 怖い度:★★
  • ジュンジとハヤトのやさしさ:★★★★★
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