『悪の十字架(あくの じゅうじか)』は、昭和に流行ったダジャレ怪談の中でも、特に有名なお話の一つです。
とある男の朝の体験をお話にしてます。
「悪の十字架の話をして」と言われたら、ぜひ読んでみてあげてください。
10秒で話せる『悪の十字架(あくのじゅうじか)』
とある男が駅を出て、駅前の道を歩いていきました。
一軒の店の前で男は立ち止まり、店のシャッターを見ています。
おとこはつぶやきました。
「この店 開くの10時か…」
『悪の十字架』
怪談『悪の十字架(あくのじゅうじか)』の話
『悪の十字架(あくのじゅうじか)』
男は駅の改札をでて、目の前の通りを歩いて行った。
通りの両側にはたくさんの店がならんでいるが、人影はまばら。
あたりは静まりかえっている。
ふと冷たい風が吹いたかと思うと、急に雲行が怪しくなった。
ポツリ・ポツリと雨粒が落ちはじめる。
男は傘(かさ)を持っていないのか、ぬれるにまかせて歩いていく。
長い通りの真ん中にきた時 男は急に立ち止まった。
そして左側にある店を ゆっくりと見上げる。
その店はシャッターが閉まっており 灯りもついていない。
誰もいないようだ…
男はシャッターを見上げたまま、黙ってはり紙を見ている。
雨はますます激しくなっていく。
空は真っ暗になり、やがて大きな音とともに雷が落ちはじめた。
ピカ! ド ドーン
はげしい雷が落ちる中、ずぶ濡れの男は、腕時計を見ながらつぶやいた。
「この店 開くの10時か…」
開くの10時か…? あくの十時か… あくの十字架…
『悪の十字架』
おもしろ怪談『悪の十字架』の独自採点(5段階)
- 伝統のネタ度:★★★★★
- ネタ文字数の長さ:★★★
- むりくり度:★
- 怖い度:★★
- ずぶぬれ度:★★★★★
本当に怖い『悪の十字架(あくのじゅうじか)』の続き
「ちっ。急いできたってのによ。」
全身ずぶぬれの男は、一人悪態をついた。
雨はますます激しくなり、容赦無く男に降りかかる。
しばらくじっと立ちすくんでいた男だったが、イライラしたのだろうか、急に店のシャッターを蹴り上げはじめた。
『ガシャン!』
大きな音がして、シャッターが凹む。
激しい雨のためか、周りに人はおらず、男を邪魔するものは何もない。
男はニヤリと笑い、何度も何度もシャッターを蹴り上げた。
『ガシャン!』『ガシャン!』『ガシャン!』
しばらくして、男が蹴るのをやめた時には、店のシャッターは見るも無惨にベコベコになっていた。
「ざまあみろ…」
そう呟いて、男が駅の方へ歩き出そうとした…
その時だった!
『ビカッ!!!』という音とともに、激しい雷が目の前に落ち、男とベゴベゴになったシャッターを吹き飛ばしたのである。
シャッターは粉々になり、男は3メートルも吹き飛ばされ、顔面から地面に落ちた。
うつ伏せのまま、ピクリとも動かない…
騒ぎを聞きつけた近くの店の店員が、たおれている男をみつけ、声をかける。
「大丈夫ですか!?」
あわてて男を抱き起こし、顔をみた店員は「ひぃっ!」と叫んだ。
男の顔には、シャッターの破片が、深々と突き刺ささっていたのだ…十字の形に…。
…血みどろとなった男は、すでに息をしていなかった。
『恐怖の味噌汁(きょうふのみそしる)』もご覧ください・・・
『悪の十字架』のライバルであり、ダジャレ階段のツートップの一角、『恐怖の味噌汁(きょうふのみそしる)』も是非ご覧ください。